☞SPOILER ALERT ネタバレを含みます SPOILER ALERT☜
Review by Darcon
前のページからの続き映画のはじめの方で出てくる幻想的でかつ恐ろしいシーンは、未来からやってきたルーパーだった男が、若き日の自分が拷問に遭い少しずつ自分自身の体が消えていくのを見る事しかできない場面だ。
未来のジョーも同じ途をたどるはずだった。
未来に存在するジョー(ウィリス)は捕らえられ、若き日のジョー(ゴードン=レヴィット)に殺されるべく過去に送られてくる。
しかしこのジョーは、もちろんただ飛ばされない。
殺される者のアイデンティティを隠すためのカバーを取り外していたジョー。
そしてその顔を見て驚く若き日のジョー。
若き日のジョーを演ずるジョセフ・ゴードン=レヴィットは、特殊メイクを施され表面的にもブルース・ウィリスに似せるようにされていた。
しかし表向き以上にゴードン=レヴィットが、ウィリスの声色、表情、ニュアンスなどを微妙な所まで勉強し真似ていたことはよくわかる。
ただ、どう見てもこの二人が同一人物、年を経た同じキャラクターとは思えない。
もし監督がこの二人が瓜二つである事、マナリズムの真似が大切だと思っていたとしたら、そこのところは成功したとは言えない。
若い時が右利きで年を経ると左利きになっている、なんて細かいところは気づかないものだ。多くの観客はプロットの穴や不一致の多さ、タイムトラベルにおけるリアリティの矛盾などを指摘するかもしれない。
例えば、過去のジョーと未来のジョーのやりとり。
最初に出くわした時未来のジョーは過去のジョーをぶん殴り「逃げろ」というメモを残す。
だが、二回目のシーンではメモを残していない。未来が現在の現実に顔を出したら現在が未来に続くように事が運ばなければ未来は現在に戻れない。
考え始めたらきりがなくなってしまう。この映画は、原因と結果を示す因果関係に答えがないのだ。
人気のあった大ヒットテレビ番組『LOST』や『Xファイル』(原題:The X-Files)を見続けて何年も無駄にしてしまったと気づいた時の事を思い出す。
ドラマのクリエイターがすべてを明らかにするつもりがまったくないとわかった時のあれと同じなのだ。
いらつかず、受け止めるのがいい。
矛盾ばかり追求していたら楽しめない映画だ。
歴史を書き換えるために未来から来た奴から愛する子供を守る母親というプロットに、大作『ターミネーター』(原題: The Terminator)のようで独創性がないと憤慨する人もいるだろうが、娯楽性のみを楽しめばいい。ヴァイオレンスは激しいから小さい子供向きではない。
シネマフォトグラフィ、音響効果(つぶやきの音量はもう少し考慮して欲しかったが)、音楽は良い。
特にCGに頼りすぎないメイク、特殊効果はよくできている。飛び抜けたビデオゲームのエレメンツに頼りすぎないで、空想的で想像力を生かした別世界を描くちょっと風変わりなストーリーを重点を置き、全体的にサイエンスフィクションとしてうまくいっている。
未来ってものにはいくつもの可能性が秘められている。
しかし今、現在はたったひとつなのだ。
★★★★✩
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他の人と目の付け所が違うのかもしれないけれど、愛妻をいくらレインメーカーに殺されたからって、過去に戻ってレインメーカーになるかもしれない子供たちを次々に殺すなんて許せない行為だと思います。
いくら自分を深く愛していてくれたとしてもあんなことする男は嫌です。
私の夫がそういう行動に出たらうれしくないです。
他の方法にして欲しかったと思います。
幼い子供たちを犠牲にして成り立つなんてラブストーリーとは言えません。