Review by Darcon
『ボーン・レガシー』は『ボーン』シリーズの第四弾だが、マット・デイモン主演のトリロジーで止めておけばよかったとつくづく思う。
勿論、『ボーン』シリーズの製作側からしてみれば、ここまで成功したシリーズからもっと甘い汁を吸う為に大金をかけ『ボーン・レガシー』を創る事は理(利?)にかなっているのかもしれない。
だがそれは、中で暮らしている住人の事を考えず、持ち主が建て増しし続けるアパートみたいなものだ。こんな表現をしたらドラマティック過ぎると言われるかもしれないが、この映画はメロドラマと言えるかもしれない。
俳優達はただ型通りに動いているだけ、勿論ベースにするものがないのだから無理ない。
ひどいセリフのやりとりとできの悪いシーンがほとんどだ。『ハート・ロッカー』で名を馳せたジェレミー・レナー演ずるアーロン・クロスは、ジェイソン・ボーンと同じように優れたシークレット・エージェントでアウトカム作戦の一員。
アウトカム作戦というのがこれまた秘密裏に行われているもので、極悪非道ながらもダイ・ハード愛国主義のエド・ノートンがこれを指揮している。
ノートンがこの作戦を抹消しようとする所から物語は動き出す。アラスカの大自然のもとアーロン・クロスはサバイバルトレーニングを行っており、そこで同僚かもしれないエージェントに出会う。
この後2人を抹殺しようと送られてくる無人航空機のシーンはシネマならではの醍醐味がある。
このシーンが示すように、最初の15分はいい映画になる可能性を秘めていた。
野生がうごめく自然の中での張りつめる緊張感。
しかし、主人公が山を下りるとともに、物語も降下する。これまでの『ボーン』シリーズと比較してしまえば、そして「それ」を期待してしまえばがっかりするだろう。
凄まじい追跡シーンや世界各地でのロケシーンなどがあるにもかかわらず、肝心のハートがない。映画を観ている最中集中もできない。
映画を観ているにもかかわらず他に考えが行ってしまう。❦ ジェレミー・レナーってスティーブ・マックイーンにちょっと似てないか?
❦ そういえば芝居の仕方も少し似てる。
❦ あれっ、ジェームズ・ボンド役のダニエル・クレイグってジェレミー・レナーに似てないか?
❦『ナイロビの蜂』 でオスカー取ったレイチェル・ワイズが共演してる。
❦ 目の保養になる美しさ。彼女確か、ダニエル・クレイグと結婚してたなあ。
❦ 待てよ、ダニエル・クレイグってスティーブ・マックイーンに似てないか?映画の話に戻らなくては。
この映画を観にいくなって言ってる訳じゃない。
特にアドレナリンジャンキー、アクション映画ファンにとってはマニラ(フィリピン)でのチェイスシーンが素晴らしい。
ただ、どこかで観たような気がしてしまう。
次第に主要キャラに同調できなくなりジェレミー・レナーが逃げ切って欲しいと思えなくなってしまった。
『ボーン』シリーズの見どころのひとつがプロタゴニストを追う暗殺者だが、今回もルイ・オザワ・チャンチェンが静かなすごみをうまく出している。『ボーン・レガシー』の監督トニー・ギルロイは、最初の『ボーン』トリロジーで脚本を担当していた。
彼は要となる心や魂を忘れてしまったとしか思えない。
最初のシリーズにもアクションがたっぷり詰まっていたが、何よりよかったのは、原作の作家ロバート・ラドラムが創り出したキャラクター、ジェイソン・ボーンの深さがうまく描かれた点なのだ。この映画の終わり方がまたいただけない。
キャストとスタッフが他に行く所があったとか、金を使い果たしてしまったからしょうがないというしけた理由で無理やり終わらせたのではないかと勘ぐってしまうようなエンディングなのだ。
こんな締め方じゃ「もっと知りたい」という気も起こらない。
ただ「なんだこりゃ?」と混乱したのみだ。
きれいな女性が美しい海を行く船に乗ってるシーンなんて前にも007の映画にあった。『ミッション: 8ミニッツ』をレンタルして家で観る方がいいかもしれない。
★★★✩✩
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- インタビュー:『ボーン・レガシー』(原題: The Bourne Legacy)のアサシン ルイ・オザワ・チャンチェン氏
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