シュレック フォーエバー(原題: Shrek Forever After)
ドリームワークス・アニメーションの代表作であると同時にドル箱でもある『シュレック』シリーズ.
第一章『シュレック』の新鮮さ、第二章『シュレック2』の痛快さが人気だったが『シュレック3』でがっかりしてしまったファン達はこの第四章にあまり期待を持っていなかった.オリジナルと同じように、おとぎ話の絵本のページがめくられながらこの映画も始まる.
シュレックの人生は、フィオナ姫と結婚後、三人の子宝に恵まれ「めでたし、めでたし」のはずだったが、来る日も来る日もおむつ替えの毎日に自分の時間が持てず苛立ちがつのるばかり.その上、人々にオーガとして恐れられなくなった彼はひとり気ままだった怪物の暮らしを懐かしむ.
そんな時、シュレックを陥れ、「遠い遠い国」の王になる機会をうかがっていた魔法使いのランプルスティルスキンが出現.彼の罠の契約にだまされ、シュレックは別の次元に飛ばされてしまう.このシュレックが飛ばされるシーンが素晴らしい.ビジュアルの技術が向上した事は、観てすぐわかる.
シュレックやフィオナの表情も前に比べて更に深みが出て感情の移入がしやすい.夜の場面が多いためその微妙な照明にも努力がみられる.
特筆したいのがクライマックスの戦闘シーン.シュレックとフィオナのチームワークはシルク・ドゥ・ソレイユ(Cirque du Soleil)顔負けの創造性と優美さがあり、反乱オーガ達の登場場面も光彩を放つものである.テクニカルな面より、この映画の成功の鍵は、監督マイケル・ミッチェルが強調した原点に戻るという事を大切にしたジョシュ・クラウスナー と ダレル・レムケの功名な脚本、そして、ニック・フレッチャーの習熟した編集による所が多い.
編集の見事さは、シュレックの平凡な毎日を畳み掛けるようにみせた所、シュレックが元の恐れられるオーガに戻って快気するミュージックビデオ的な部分、フィオナの戦闘練習場面、そしてシュレックとフィオナがチームとなって闘うシーン等数え切れない.
ドラマ性が高まった後必ずユーモアをきかせるうまさと、フィオナの気持ちがシュレックに次第に傾いていくストーリーラインの運び方の手際よさは、見応えがある.
今回に特別なのは、温かみがたくさん加わった台詞が多くなっている事である.「今日一番良かった事は、君と再び恋におちる事ができたことなんだよ」(The best part of today was I got a chance to fall in love with you all over again)という殺し文句が、オーガから出てくる事にまるで違和感がない.
名作『素晴らしき哉、人生!』(原題:It’s a Wonderful Life)を思わせるテーマをうまくおとぎ話風にまとめあげているのも、ギミックに頼らず物語を大切にしたこの最終章を皆から愛されて来たシュレックにふさわしい「めでたし、めでたし」に仕上がるのに役立っている.
『シュレック』と『シュレック2』と比べてしまえば物足らない所があるが、シリーズとしての最後を飾るのが『シュレック3』でなかった事を嬉しく思うと同時に、それなりに楽しめる微笑ましい出来になっている.レギュラーのドンキー(声:エディ・マーフィー)、長ぐつをはいた猫 Puss(声:アントニオ・バンデラス)、クッキー・マン Gingy(声:コンラッド・ヴァーノン)、を始め、ランプルスティルスキン(声:ウォールト・ドーン)、『オズの魔法使』の西の悪い魔女を思わせる魔女達(声:キャシー・グリフィン、他)、ハーメルンの笛吹き男 Piper、オーガ達(声:ジョン・ハム、クレッグ・ロビンソン、他)といった色とりどりのキャラクターが脇をうまく固めている.
エディ・マーフィーとアントニオ・バンデラスは、疲れをみせず大活躍、ウォールト・ドーンが嫌みさを期待以上に引き出し、登場場面が少ないもののクレッグ・ロビンソンが笑いを多いに集めている.
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