インタビュー:『ボーン・レガシー』(原題: The Bourne Legacy)のアサシン ルイ・オザワ・チャンチェン氏

インタビュー:アクション映画の世界

『ボーン』シリーズ 新たなる暗殺者 ルイ・オザワ・チャンチェン氏

 

脚本6ページ分だけ会話がある小さな役のためにオーディションを受けたオザワ・チャンチェン氏。
ところが、オートバイを乗りこなせる事がきっかけで『ボーン・レガシー』のヴィラン役に大抜擢。
ニューヨークの舞台からハリウッド映画と、何でもこなされるオザワ・チャンチェン氏にお聞きしました。
 
映紹:『ボーン・レガシー』のルイさんは怖かったですね。あのルイさんには追いかけられたくないって思いました(笑)。
ルイさんの演ずる「LARX-03」というキャラクターは、遺伝子操作をされ残酷無比になるよう洗脳されたスーパーソルジャー。
理論的に言えば、マット・デイモン演ずるジェイソン・ボーンよりも、ジェレミー・レナー演ずるアーロン・クロスよりも優れているという訳ですよね?

Photo Courtesy of Louis Ozawa Changchien

LC:僕が言うよりうまく表現してくれるね。
「LARX プログラム」というのは一貫性のあるトレッドストーンのようなものなんだ。
ボーンやクロスより優れていると言えるかわからないけれど、彼らみたいな不合理はないね。

映紹:LARX-03は何も言いません。常に標的・ターゲットに集中してあきらめない。
ルイさんの演技は強烈でした。

LC:どうもありがとう。

映紹:映画『ボーン』シリーズに出てくる数々のヒットマンたちの演技は観られましたか?
ルイさんはどのような役作りをしたのですか?

LC:勿論。『レガシー』の仕事を始める前にシリーズのひとつひとつを見直したよ。前からこのシリーズのファンだったしね。
刺客は皆それぞれ個性を生かした最強の野郎たちだった。だからこそ独自のものを表現したかったんだ。
役作りとしては、『ターミネーター2』(原題:Terminator 2: Judgment Day)でロバート・パトリックが演じた「T-1000」の影響が一番大きいかな。
彼のフォーカスと一途な決意みたいなものに魅了された覚えがあるんだ。
あと、マイク・タイソン。タイソンのドキュメタリー映画を観た事がある?
彼が絶好調な時の優勢は、彼の最高位の自信、むき出しの威嚇から来るものなんだ。
彼の眼を見ればわかる。彼が負ける訳がない。彼の身体は常に前へと動いているんだ。
こういったクオリティを「LARX-03」というキャラクターで表現したかった。
彼の前に障害になるものなど何も無いって感じをね。
それからスタント・コーディネーターのクリス・オハラの指示で総合スタントブートキャンプに行ったんだ。
有名なリック・シーマンからスタント・ドライヴィング、偉大なるスタントマン、レイン・リーヴィットやジャン・ピエール・ロイからモトクロスのトレーニング、最後はヴィクター・ロペズとパルクールのトレーニングといった訓練を受けたよ。
楽しかったけど大変でもあった。青あざやら何やらでキズまるけさ。
それ以外は怪我をしないようにシェイプアップに励んだんだ。
ウェイトリフティングだけじゃ飽きちゃうから水泳、ランニング、そしてプライオメトリクスをまぜるのが好きだった。

映紹:その成果がフィリピン、マニラでの長いチェイスシーンですね。
ルイさんは走りまくり、車やオートバイをも運転、とアクション続きです。
『レガシー』と他のアクション映画との違いは何だと思いますか?

LC:『ボーン』シリーズと他のアクション映画の一番の違いは俳優がほとんどのスタントをこなさなくちゃいけないところかな。
このシリーズがハイパーアクション・スタイルを創り出したようなものだからね。
最初の三作がエスピオナージ、諜報映画というジャンルを描き変えたと思う。
だからこそファンの期待も大きい。
『レガシー』の映画で、僕がどこまでスタントを自分自身でやれるかという事に対してトニー・ギルロイとダン・ブラッドレイは断固たるものがあったよ。
マニラに経つ前にニューヨークの撮影現場にトニーから電話で確認があった位さ。
トニーとダンはいくつかのスタントの怖さを強調し続けるものだから、正直ちょっとナーヴァスになっちゃったよ。

映紹:そのトニー・ギルロイとダン・ブラッドレイと仕事をしてみていかがでしたか?

LC:このふたりを芸術面で100%信用していた。そして重要な自分の命に関しても信用していたよ。
このふたりはそれぞれ各自の分野でベストの仕事をする人達だ。
トニーはこの業界において素晴らしい脚本家・監督のひとりだし、僕自身、彼の映画『フィクサー』(原題:Michael Clayton)は完璧に近い仕上がりだと思っている。
もともと『ボーン』シリーズの担い手の一人だし、シリーズを第一作目からをつないでいる一本の糸でもある。
『ボーン』シリーズを知り尽くしているのはトニー自身他ならない。
現在、ダンはアクション・オトゥールにおいて卓越していると思うよ。
彼のチェイスシーンはダイナミックで独創的だ。
多くの人が歴史的なチェイスシーンだと気づいていないかもしれないけど、そんな作品のパートを担えてラッキーだったと思っている。
特にオートバイのシーンは前代未聞だ。世界最高のスタントドライヴァー、モーターサイクルのスペシャリスト、ワイアーワークのチームが揃ってた。
おっと、アクション撮影のスタッフも忘れちゃいけないね。
ひとつのシーンにカメラが5個以下だった事はないんだよ。
屋根からぶら下がったり、車の中にいたり、車の下にいたり、彼らはどこででも活躍してた。

映紹:活躍といえば、主役のジェレミー・レナーはどんな方ですか?

LC:生存中の俳優の中で最高な役者の一人だよ。アクションとなると特に最高さ。
あっ、それと、カラオケがすごくうまいんだ。
東洋人の生まれ変わりじゃないかと思える位カラオケが大好きなんだ。
彼はホントにかっこいい奴さ。

映紹:かっこいい人は他にもいましたね。
マルタ・シェアリング博士役のレイチェル・ワイズがルイさんを思い切り蹴りますけど、彼女が最後のダメージを与えたんじゃないですか? 
いかがでしたか?

LC:稀にみる美しさを持つレイチェル・ワイズに殺されるより悪い死に方はいっぱいあるからね。

映紹:それもそうですね。
『ボーン・アイデンティティー』(原題:The Bourne Identity)、『ボーン・スプレマシー』(原題:The Bourne Supremacy)、『ボーン・アルティメイタム』(原題:The Bourne Ultimatum)の中でどれが一番お好きですか?

LC:何故か『ボーン・アルティメイタム』を一番観ている気がする。
最近『アイデンティティー』を見直して、改めてオリジナルの魅力の虜になったよ。デイモンとポテンテのケミストリーがすごくよかった。
でも『アルティメイタム』の最後のカーチェイスを追い越すのは無理だよ。
 

 
次回は、オザワ・チャンチェン氏のアメリカにおける東洋人系俳優としての見解、生い立ちなどのお話を掲載致します。
 

Louis Ozawa Changchien
ルイ・オザワ・チャンチェン 1976年10月11日生。
日本人の母と台湾人の父を持つニューヨーク出身の俳優。
名門ブラウン大学で演劇を学ぶ。修士号。
テレビ番組『ロー&オーダー』(原題:Law & Order)をはじめ、映画『フェア・ゲーム』(原題:Fair Game)などに出演。
『プレデターズ』(原題:Predators)では、生まれるのが遅すぎた武士と評された日本人やくざ「ハンゾー」役を演じ、プレデターと壮絶な一騎打ちを繰り広げた。
『ボーン・レガシー』でジェレミー・レナー演ずるアーロン・クロスを追う暗殺者を好演。
ニューヨークを拠点とした数々の舞台で主役を務める。

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