マーティン・スコセッシ監督の秀作『ヒューゴの不思議な発明』(原題: Hugo)に登場した初老の男ジョルジュ・メリエス(Georges Méliès)を覚えているだろうか.
ベン・キングズレーが演じたメリエスは、架空のキャラクターで彩られるこの作品の中で、唯一実在した人物をもとに演出している.
20世紀初頭に活躍した映画人メリエスには「初」とか「創始者」または「父」いうタイトルがよくついている.
様々な映画技術を生み出した彼の偉業を讃え、影響を受けた者、鼓舞された者も映像の世界においては数多い.
手品師だった彼ならではのSFXは、彼のイマジネーションを実現化し、今なお夢を見るようなマジカルな光を放っている.
このメリエスの映像への愛をスコセッシ監督がチャネリングして制作した映画は、第84回アカデミー賞で撮影賞、美術賞、視覚効果賞、音響編集賞、録音賞を受賞し、イノベータ・革新者のメリエスの名にかなった結果となった.
メリエスの代表作は、世界初のSF映画とされる『月世界旅行』(仏題: Le voyage dans la lune、英題: A Trip to The Moon)で1902年に公開された.
アニメーション、SFXを駆使したモノクロ・サイレント映画は、ジュール・ヴェルヌ(Jules Verne)の『月世界旅行』(仏題:De la Terre à la Lune、英題:From the Earth to the Moon)とH・G・ウェルズ(Herbert George Wells)の『月世界最初の人間』(原題:The First Men in the Moon)が基になっていると言われている.
この映画が日本で、それも劇場で、観られるという素晴らしい機会が訪れた.
夢(ドリーム)を追いかけ、想像力(イマジネーション)を解き放ち、追憶(ノスタルジア)に浸れるのだ.
エスパース・サロウ配給によって、東京のシアター・イメージフォーラム(8/25-10/5)、愛知の名古屋シネマテーク(10/6-10/12)、京都の京都みなみ会館(10/1-10/5)、兵庫の神戸アートビレッジセンター(10/6)で公開される.
限定公開で上映期間等はそれぞれで違うが、時間が許す限り遠出をしてでも行かれる事をおすすめしたい.
復元カラー版『月世界旅行』にはフランスのミュージックグループ Air による新たな楽曲がついているのだが、下記のイベント上映では特別に生伴奏付きで映画を楽しめる.
9月29日、 京都みなみ会館では、古後公隆氏によるチェロの生伴奏.
10月6日、 塩屋の洋館、旧グッケンハイム邸で生演奏.
【参照】エスパース・サロウのサイト(時間等の詳細)
海の見える洋館でのイベント以外は、『月世界旅行』に併せてドキュメンタリー映画『メリエスの素晴らしき映画魔術』(原題: Le voyage extraordinaire)も上映されている.
『メリエスの素晴らしき映画魔術』は、映画創世記に活躍したジョルジュ・メリエスの成功と挫折の人生を、時代背景と織り交ぜたもので、トム・ハンクスもインタビューに参加している.
リストア作業によって完全復刻した『月世界旅行』は映画の原点ともいえる作品.
16分弱ではあるが、素直な大きな心で映像のワンダーに胸を躍らせ、一夜イメージの魔術に身を任せるのも秋の夜長にピッタリなのではないだろうか.
ちなみに、クイーン(Queen)の『ヘヴン・フォー・エヴリワン』(Heaven for Everyone)プロモーションビデオや、スマッシング・パンプキンズ(The Smashing Pumpkins)の『Tonight, Tonight』ミュージックビデオは、オマージュ作品とも言える.
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色彩が何とも言えませんね。
白黒もいいけれど、こういう感じの色づけも雰囲気を盛り上げてファンタジー感を強めている気がします。
スマッシング・パンプキンズのヴィデオのイメージが強烈で、これがオリジナルと思っていたけれど100年以上も昔の映画監督のイマジネーションだったなんてすごいな。
でも、エール(Air)の楽曲はいまいちだと思う。フランス色で固めたいのはわかるけどサイレント映画に合わせたミュージックという感じではなく独立してしまっている感がある。
紹介ありがとうございます。
楽しみにしてます。
九州にいる友だちも見たいだろうに、それが残念。