エアベンダー(原題:The Last Airbender) レビュー(評論、批評、見解、感想)

エアベンダー(原題:The Last Airbender)

アメリカで人気を博したニコロデオンのアニメ、「アバター 伝説の少年アン」(原題:Avatar: The Last Airbender または、Avatar: The Legend of Aang) を基にした実写の映画「エアベンダー」(原題:The Last Airbender) が、今日アメリカで公開された.
「シックス・センス」で一躍有名になったM・ナイト・シャマラン監督が、彼のこどもたちと毎週楽しみにしていたと言うテレビアニメ番組をどう実写化するか話題になった.

オリジナルアニメシリーズの第1シーズン(水の巻)は、2005年2月21日から同年12月2日までテレビ放送され高い視聴率を得る.その500分近くに及ぶストーリーを約4分の1に凝縮するのだから、原作にどこまで忠実にいくか、自身のヴィジョンをどこまで出すか、それが監督の腕の見せ所であっただろう.
哀しきや彼の場合どちらつかずであったこと上映から10分もしないうちにあきらかになる.

© Paramount Pictures. All rights reserved.

「アバター 伝説の少年アン」が実写化されるにあたって配役が発表された時、テレビアニメのファン達は怒りを隠せなかった.なぜなら、アン、カタラ、サカ、ズーコといったメインキャラクター(主要人物)達が、白人に配役されたからである.アジアテーマの濃い原作に慣れ親しんだファンの多くは、主要人物達が東洋人でなく、皆白人達であったことを人種差別と取ったのだ.有色人種では客が取れないと思っているハリウッドではよくあることだが、ファン達以外もこれには不満の色を隠せなかった.インド系アメリカ人の監督シャマランは差別を否定したが、人々の彼への批判はやまなかった.その後間もなく「スラムドッグ$ミリオネア」で有名になったインド系イギリス人のデヴ・パテールがズーコの役をすることが発表された.

肌の色云々より演技のよさを考えた為の配役決め、と信じたかったが、最初のシーンからこれら俳優達の演技のひどさに驚く.
エスキモーを思わせる水の国(と言うより氷の国)の民サカ(ジャクソン・ラスボーン)が食料を確保しようと必死になっている時、彼の妹で南の水の国唯一の<ウォターベンダー>カタラ(ニコラ・ペルツ)はベンディングの練習をしている. そこでこの二人は氷の中で眠っているアン(ノア・リンガー)と空飛ぶバイセン、アッパを見つける.一方、火の王国の王子ズーコ(デヴ・パテール)はその優しさ故、父王オーザイ(クリフ・カーティス)の怒りを買い国を追われ、その名誉を取り戻すため火の王国に帰るため<アバター>アンを追っていた.
いったい自分達がどういうキャラクターで、どういう心情でいるのかもわかっていない情けなさ、次々出る台詞の間の悪さ、その台詞自体悲惨なまでに説明的でいったい誰がこんな下手な書き方をしているのかと疑った位(勿論、シャマラン).広大なストーリーを追いかけるのに精一杯で息切れのする言葉の数々に、底が浅く真の理解がまるでされていない物語となっている.

今回日本語字幕を担当した方々に同情する次第.

アン、カタラ、サカを演じるの白人俳優一行が助けるのが東洋人や黒人の俳優演ずる民の村々と言う設定には眼を疑う.すでに人種差別と悪評の高い映画を何故?と首を傾げる.
観ていて苦々しくなる演出、ミスキャストの全俳優達の演技と呼ぶには恥ずかしい演技、自然さの欠けた人間の本質もわからない脚本の愚かさ、それに加え、カメラワーク、撮影もぎこちないフォーカスのぼけたもの.
水、土、火、気といったエレメントを特撮チームが楽しみながらあっ!と言わせてくれるのかと期待したが、最後の戦いがあるわずかなシーン以外これもまた乏しいものとなっている.

ちなみに、それぞれのベンダーが使うスタイルは、エアベンダーが八卦掌、ウォーターベンダーは太極拳、ファイアーベンダーが北少林拳、アースベンダーは、洪家拳と、四種の中国武術を基にしている.

原作アニメは第二(土の巻)と第三(火の巻)シーズンがあり実写も三部作となるはずだったらしい.M・ナイト・シャマラン監督は、あくまでもシリーズを続けると言っているらしいが、ここまでひどい映画を観ると、監督、脚本、撮影、俳優を全て変えなければ人々は映画館に来ないだろう.本当の傑作を観るため、この際皆でニコロデオンに日本語字幕付きの原作アニメDVDを一刻も早く作るよう呼びかけるしかない.

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